雪の上で仕上げられる越後の貴重な麻織物

越後上布小千谷縮というユネスコ無形文化遺産に登録される麻織物がある。

 

新潟県南魚沼市周辺作られるその織物は、江戸時代には幕府により、武家の夏の式服として定め、上級武士や大奥で愛用されたこの麻の反物は、江戸後期には年間20万反ほどの生産量を誇ったが、現在は年間たった30反のみが作られるのみになってしまい、大変希少な反物となった。

 

古代より、越後は優れた苧麻(ちょま)を生産してきたが、のちに上杉家の会津移封により会津にその生産は会津に移った。

現在は奥会津で栽培された苧麻を丁寧に積み糸にし、織られている。

積み糸を作る際、苧麻を細く綺麗に裂くことで、より艶のある糸を作ることができる。

この積み糸を作る以降も非常に多くの工程があり、完成までに約60ほどの工程を必要とすると言われている。

 

そして、この織物の最大の特徴は雪晒しと言われる工程にある。

雪晒しは、夏は米作が行われる田の上に積もった雪の上に織りあがった布を晒す作業である。

条件として天気が晴れの時に行われるが、これは雪が溶けた際に出る水蒸気が立つ際に紫外線があたることで、化学反応を起こしオゾンを生じることによって布目の低音漂白を行うためであり、この作業により、白いものをより一層白く、染めた色をより鮮明にすることができる。

 

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この作業は必ずしも新しく作る際の作業ではなく、汗染みなどの汚れがついたものの汚れを落とすこともでき、晒した後の雪を見ると、汚れが雪に黒く移る。

また、雪晒しは、麻織物でのみ効果があるというから不思議である。

 

かつて雪により閉ざされたこの地域では、より高く反物を売るために、麻を織る女性たちが競うように上質な麻織物を作った。

それにより価値を高めた織物が今もなお、越後の地にひっそりと継承されている。